お店は順調に伸びていたが、うまくいけばいったで問題は起こる。忙しすぎるとどうしてもイライラする。
ランチの時間はいっきにお客様がくる。最初は作るのが忙しい。英二が必死になって作っているときに、手持ち無沙汰な洋子に「まだー」とか言われると、わかっていながらも腹が立つ。手が空いてるならチッタア手伝えよ、といいたいが、作るのは自分の仕事だから仕方がない。
料理が追いつきだすと今度はホールが忙しくなる。必死になってテーブルまで運ぶ洋子だが、追いつかないのに、「おい、はやく運ばないと冷めちゃうぞ」と奥から英二の声。運ぶのは自分の仕事でも、作り終わったら、運ぶのも手伝ってよと言いたくもなる。
あるひ、ランチタイムが終わった後に、そのことを話し合った。お互いがもう少し相手の仕事もできるように努力するかということになったが、そもそもお互い、苦手な上にやりたい仕事ではない。この試みは、見事に失敗し、かえって、現場で言い争いが絶えなくなってしまった。
それぞれ、自分の仕事にはプライドもあるし、こだわりもある。パートナーが、その価値に目を向けてくれないと、自分自身の価値感が否定されたように感じる時がある。料理なんか多少うまくてもまずくてもたいしたことないのよ、と洋子が自分に言っている。メシがうまけりゃ、愛想が悪くても客はくる、めしを食いに来てるのだからと英二が言っている。お互いが、相手が自分を否定しているととらえてしまうのだ。
相手は、実際には、そんなことすらも考えてない。自分の価値に生きているのだから、味に興味のない洋子にとって、味はついで以上でも以下でもない。こういう行き違いが組織を壊していく。(次回に続く)
2006年12月25日
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