えのもと果物店では、夏になると店頭で三日月型に切ったスイカを一切れ百円で売っていた。スイカを切るのは、普段は店にいないおとうちゃんの数少ない仕事だった。刃渡り50センチはあろうかというでっかい包丁で、スパッと半分に切る。ここからが真骨頂なのだが、その半分のスイカを更に10個に切る。三日月型になった10個のスイカをまな板に並べると、ほとんど厚さが変わらない。
えのさんはいつも感心しながら見ていた。えのさんもやってみたくて、腐ったスイカをもらって練習。でもなかなかうまく切れない。太いのと細いので倍くらいの違いが出るし、端から順に切っていくのでちょうど10個にはなかなかならない。
おとうちゃんにはもうひとつすごい特技があった。スイカをたたくと中身のようすがわかるのだ。えのさんは不思議だった。確かに、スイカを切って売るので、熟してなくて中が白かったり、熟し過ぎて綿のようにざらざらになっていたら売れない。
「計介、これは中が少しざらついて空洞がある」といいながら切ると、本当にその通りの中身がでてくる。
「おとうちゃん、なんでわかるの?」と聞くと、おとうちゃんは勘だと答えた。えのさんはしつこく聞く。
「どうしたら、そんな勘ができるの?」
おとうちゃんは、それはなんどもなんどもスイカを切ったからだと答えた。
それからえのさんがとった行動は、おとうちゃんに頼んで、おとうちゃんが切る前に、スイカをたたいて中身を当てさせてもらった。これは、腐ってる。これはまだ浅い。これは綿になってる。と訓練していった。小学高学年になった頃には、えのさんもりっぱに中身を当てられるようになっていた。
2006年12月20日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/29912371
この記事へのトラックバック
http://blog.seesaa.jp/tb/29912371
この記事へのトラックバック
